1000の小箱展
第4回 1000の小箱展 (2008年)
モゾモゾモゾモゾ/宮澤 有斗
ぼくのびょうぶ絵/畠山 珠季
高橋の集い/高橋 薫
ぬけがら/長谷川 克夫
KIND OF BLUE (父についてのいくつかのこと)Ⅰ/アンドウ・レイ
ため息の実/李 綾子
遊猿地/野呂 光平
Loop(ループ)/野田 かつよ
マスキング・ストーリー/秋元 さなえ
rescue/石金 昭広
トイレ/菅原 愛
水棲昆虫の世界/滝本 成人
僕は いりませんか?/幸田 大和
引き出しの中で生きた世界/伊達 早苗
around40 ~思い出の引き出し~/東山 ゆかり
砂漠に星を蒔く/伊藤 和代
ブラシ/地村 洋平
働き○○…?/山城 淳美
靴破れても、夢はあり/吉川 敦子
MARKER IN A DRY LANDSCAPE/PATRICIA WILSON-ADAMS
ファンタシュ-ム/菱川 陽子
浮蛙/今城 晶子
1年生が学んだ人権の事例/髙橋 成和
世界一うまいラーメン/熊谷 祐河
守りがみ/川村 隼平
egg planet3/菅原 柾樹
探求/羽馬 壮一郎
いん石VSうちゅう人/望月 一史
ママ/施韵心
山の中の男の子/古屋 真優
ぺんぎんがすむ空とぶカメゴロウ/三浦 大樹
海のシンフォニー/三井 理紗子
ちょこっとこわい運動所/横山 貴大
六角 鬼丈
建築家、東京藝術大学建築科教授
1000の小箱展は3年間開いてしまい、久しぶりにワクワク気分で臨んだが、600点に近い応募があり驚かされた。
まず、一般の部とジュニアの部と大きく分けて審査が開始された。
一般の部はさすがにテーマ性も豊かで、手の込んだ作品が多い。小箱の意味や展示の方式が応募者にも浸透し始めたのか、自己の想いや心の風景さらには宇宙観 といった縮尺、寸法無限の世界がA4サイズに工夫されていて、魅力的な作品が多く、大いに楽しませてもらった。最優秀賞は5点ほどに絞られた作品の中か ら、固定物なのに、ランダムに群をなし、眺めていると、小箱の中を這いまわっているように錯覚する「モゾモゾモゾモゾ」が選ばれた。
ジュニアの部では、直截的で感情がむき出しの表現と、一方で、ものをこまめに観察して丁寧に作り上げていたものがあり感心した。当然どちら良いなどと言え る訳はないのだが、今回はグループで応募しているところも多く、カリキュラムに取り入れているようで興味深いが、テーマにもう少し自由度が感じられるとよ いと思えた。
総じて、応募者皆さんの創造力、参加力に感謝するとともに、この1000の小箱展が、これからも持続していく価値があると証明されたようなものだと思う。
赤沼 潔
美術家、東京藝術大学工芸科准教授
応募作品数が前回の倍ぐらいであったとのことで、審査会場は応募作品で溢れかえり、熱気がありました。応募締め切り前は、森美術館や東京の各所で応募案内 のフライヤーに触れる機会が多く、「1000の小箱」展も全国的に認知されてきている実感がありましたが、感覚ミュージアムの関係者の方々の緻密な努力の 成果であると感じられました。作品も応募数に比例して完成度の高いものが多く、審査も慎重に行われました。多くの制作時間を費やしている作品や、素材の特 性をうまく引き出している作品、ユーモラスな作品等内容にも幅があり魅力的でした。小箱に収めるためのサイズの条件は、表現する上では難しかったと思われ ますが、そのサイズを巧みに利用し、アート的に優れている作品が上位に入りました。特に、大賞の作品は、ユーモラスな印象の中にも強かな造形力を感じさせ るものでした。受賞しなかった作品にも手芸的ではありましたが見応えのあるものが数点見受けられました。少し残念に感じられたことは、ジュニア部門に類型 的なものが多くみられたことで、もっと自由に展開してほしいと感じさせられました。小箱を通して多くの方々と作品が触れ合うことは刺激的で、また、作者の 方々にも反応が楽しみな企画であり、今後より展開することを期待します。
石田 智子
ファイバーアーティスト
最高齢83歳の方を筆頭に中高年の参加者も多数あり、しかも現代アート的な思考に近い感覚で制作されている方々も少なくないことに、まず驚きました。逆に ジュニア部門では、たとえばある一つの教室から団体で応募、というのがはっきりわかるほど、一人一人の味わいに欠けた出品が目立った気がします。美術教育 が学校で激減している昨今ですが、美術ほど「発想・思考の転換」を促す学科もないのではないでしょうか。「他を思いやること」「共存しながら個であるこ と」は、おそらく美術の主要なテーマですし、なによりそれは実際に身体で感じながら工夫する場です。そこでは行き詰まったり有頂天になるといった自らの感 情の制御も学べますし、同時に制作時間の計算や空間の把握など、現実認識も大いに養ってくれます。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、美術こそ、あらゆる 発展の可能性を秘め、こんな時代だからこそ必要不可欠な学科だと思います。単に引き出しの大きさを作品の限界と考えるのではなく、むしろ引き出しだから、 そのサイズだからこそ醸し出せる面白さ、という発想の転換を待ち望んでいます。