1000の小箱展
第5回 1000の小箱展 (2010年)
「E!nanika?」/木村 まさよ
野菜の音楽/平井 真音
「おしずかに!」/佐々木 孝信
あふれる実/李 綾子
唐々/野呂 光平
ここにいるよ/竹本 千鶴
視小説/斉木 晃
ふわり ふわり/鈴木 キエ子
くるくる/丹野 智子
起こさないでね。/福永 純子
Cap girl/南地 志保
やっぱり笑顔じゃないと/吉原 美紀
森の住人/河井 育子
家族の番人役びっくりお面/引地 久恵
毎日ワクワク!365日/中川 沙希
つぶたっぷり/打川 大惠
たまご/大槻 あゆみ
人間漬け/大場 麻由
百十二の・・・/佐藤 千尋
ライオン/星 清美
酔玉/野呂 光平
すごいパーティー/阿部 景都
ボクシング~どうじにたおれた~/井上 逸敬
How manyⅡ(蟻)/高橋 佳乃
六角 鬼丈
建築家、東京藝術大学 名誉教授
今回も多くの応募があり審査会は楽しみなのだが、毎回、審査時に思うことだが、できれば応募作品の優劣をつけたくはない。
大勢の人に参加してもらうことが大きな目標であり、この一箱一箱を参加者の自由創作の空間として確保してほしいからである。そして、持続的に活用していくことが、言葉を超えた一つの喜びへとつながることを理想としている。
A4サイズで僅かしか深さがない引き出しの世界。その限定されて一見創作の自由を奪われた狭い空間の魅力は何だろう。われわれはよく手のひらサイズという 言葉をしばしば使う。小ぶりなという意味もあるがその人が得意とする物という意味にもなる。取りつきやすそうで無我夢中になるオタクの世界へもつながって もいる。
参観者による引き出しを開けたり閉めたりする行為が、小さな創造世界が開く最初のコミュニケーションなのである。
人が何かを発見して感心する物。人の心を擽る物。人の心が和むもの。そして、見る側に思い思いの情報を発信するメールのようなものである。ローテックだが原寸の解像度の高い重たいメールなのである。
この「1000の小箱展」をきっかけに、ますます地域文化の発信力を高め、国際文化交流へと発展することを望みたい。
山田 修市
美術家、東北芸術工科大学 芸術学部長
私は今年初めて「1000の小箱展」の審査に参加させていただき、どれも楽しい作品で見ていてわくわくいたしました。
何回も見て周っているうちにだんだんと作者の意図がみえてきて、いくつかのグループに分けられました。
比較的絵画的な平面作品が少なく残念でしたが、やはり引き出しを開けた時の驚き、楽しさを考えている作品が審査員の目を引き、賞決定では3名の審査員の意見はほとんど違いませんでした。
今回は一人で2作品受賞された方もいてやはり、トライの回数が多い方のアイデアがこなれていたように感じました。
小さな引き出しの中に新鮮な世界を作り出すことは素晴らしい。
宮元 三恵
美術家、東京工科大学 デザイン学部准教授
今回は200点近い応募があったとのことで、いずれの作品もどこか現代版「ヴァンダーカンマー」のようでした。ドイツ語で「不思議の部屋」を意味する 「ヴァンダーカンマー」は、博物館や美術館ができる以前、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパの王侯貴族や学者や文人らが、美術品や貴重品を始め、珍 奇で怪しげな品々を膨大に陳列していた部屋のことです。自然物も人工物も分野を隔てず一所に取り集められるのが特徴で、主(あるじ)独自の趣向や熱情が結 晶化した小宇宙となっていますが、今回の応募作品にもそれらを思わせる独特の世界観が展開されていたことが印象的でした。入選を決めるにあたっては、いく つかの作品を実際に館内の小箱に配置してみました。選ばれた作品はどれも、引き出しのついた小箱に納めてみると、その中から作品と共にそこにはないはずの 音や匂いなどの「空間の気配」が溢れだすように感じられる作品であったと思います。A4サイズという限定された小さな空間であるにも関わらず、作者の考え や思い描く風景もしくは世界観などがつくりだす、どこか不思議な空間が無限に広がっていくようでもあり、作品を見ようと小箱を引き出す私たちにうれしい発 見や驚きを与えてくれました。また、よく考えられたタイトルも多く、見る人が作品に接する際のよいヒントやきっかけとしてタイトルがうまく機能していたこ とに感心しました。入選作以外にも優れた作品が多く、ぜひ実際の小箱に納められた際には再び、今回の作品群を鑑賞させていただきたいと思っています。あり がとうございました。