1000の小箱展

第7回 1000の小箱展 (2014年)

hoshizuna/久保 千賀子

地獄/櫻井 優一郎

密培(みつばい)/大澤 杏実

侵入者 ~ミスターG!~/伊藤 泰弘

「あ~!ごく楽・ごく楽!」/巖嵜 久継

煌めく/安原 しょうこ

見えない生きもの/両角 佑子

化石への追憶/井原 宏尚
寿司100選 ~あなたのお気に入りはどれですか/中川 沙希

ひそやかな草原/村元崇洋

光芒(こうぼう)の丘の住人/上遠野 里香

ねこじゃらし/yucke

色彩と波動と…/山下 久樹

夜光雲/福永 純子

膨らむ(中島敦「山月記」より)/ささお まこと

建てる/辰巳 香
みえないしきこえない/宮﨑 裕子

空相(さっきまでいたかもしれない・・・・・・・・・・・)/クリハラ・カズヨシ

mosquito/吉田 葉瑠日

食/佐々木 健人
黒人人形/状地 哲郎
SUCCULENT FORMS/LORENA CECILIA HAMAGUCHI


田園/鈴木 響太郎
障子の奥/外川 望実

夜の夜景/菊田 知希
だいすきなかぞく♡/八重樫 雄大

シャトル羽(う)?/菅ノ又 望

どくのヘビ ギャアー/福岡 昴

めいろの中に4つかくれているひみつの石をとるところ/髙橋 陽翔

六角 鬼丈六角 鬼丈
建築家、東京藝術大学 名誉教授



今回も300を超える応募があったことは大変喜ばしいことだ。
小箱の作品は、ただうまい下手ではない。引き出しを開けてみて感じる驚きや不可思議さ、作り手の思い入れや巧みさに引き込まれてしまい、楽しさもあるが時には不快さもある。A4サイズの空間を覗きこまされる行為がいつもと違う気持ちを高揚させ集中させられてしまう。
今回のカンカク大賞の一般部門とジュニア部門の作品は、偶然にも対照的なものになってしまった。一般部門は「天国、生命誕生」を予知する作品で、ジュニア部門は「地獄、死後の苦界」を見せている。作者の意図、背景が見えるわけではないが、静と動。清々しさと荒々しさに両極の世界観を感じさせられてしまった。
また、力強い作品では化石。繊細で触るのが怖い蚊の作品。マニアックなミニ寿司セット。乱暴だが引き出すとガラガラ音がするもの。猫じゃらしの穂を無造作に入れただけのもの。そして、内臓のような赤い食べ物?触るとべたべたと、何とも気もいものまでさまざまなメッセージが、人の五感を刺激するから面白い。ジュニア部門では重くて飛びそうもないシャトルが目に付いた。きっとこの子は無重力の空間にいるのだろう。
また次回も楽しみな世界が開かれることを期待している。

岡本奈津子岡本美津子
東京藝術大学大学院映像研究科教授



「引き出しというメディア」
私は普段、アニメーションや映画、テレビ番組など、「メディア(媒体)」を通した表現である「映像」を制作・研究しています。この審査をするにあたって、1000の小箱の作品が収納されている「引き出し」をメディアと捕えてみたらどうだろうと思って審査してみました。
実際、会場に来て、引き出しを開けてみてわかったのですが、「開ける」という行為に伴って、ガタガタと震動したり、引き出しが傾いたりします。yuckeさんのねこじゃらしはわずかな振動でも自らかさかさ動きます。山下久樹さんの大小様々な球を入れた作品は、傾く特性を、何とも心地よい波の音に変換しており、引き出しというメディアをまさに面白く使った作品だと思いました。また、「しまい込む」という特性を究極に追及したものが井原宏尚さんの古代恐竜の化石の作品で、自然の歴史が一つの引き出しの中にあるようでした。更に「開けた時のインパクト」をねらった作品として伊藤泰弘さんのゴキブリ、吉田 葉瑠日さんの蚊の作品等のように、「鑑賞者の目線に近い」ことを利用して、細部を鑑賞させる作品も印象に残りました。更に、引き出しという閉じられた空間(メディア)の中に、もうひとつの世界が存在するかのような箱の使い方をしたジュニア部門の櫻井優一郎さんは「地獄」という世界が、引き出しの中で生き生きと存在していて秀逸でした。

中田千彦

中田千彦
建築家、宮城大学事業構想学部准教授



「1000の小箱」という展覧会の企画に魅かれ、今年のコンペティションの審査員として作品を見せていただくことに、とても興奮して感覚ミュージアムを訪ねました。小さな引き出しが無数に並ぶ展示室に入ると、その一つ一つが「開けて中を見てくれよ」と声をかけてくれているようです。今年のコンペに合わせて集まった新たなコレクションの中から、大賞他、幾つかの入賞作品を選出するのは、とても大変で楽しいお仕事でした。まず初めに、引き出しを開けた時に思わず「ああっ」と声を上げてしまいそうな作品を選びました。アートとは、何かありがたいものや美しいものが用意されていて、私たちがその恩恵を享受するというものではないと思っています。アーティストが何かしらの先見の明や、世界を探る特異な感性を携えて、私たちの少し先を歩みながら、ふとした瞬間に、それは作品を作る行為と重なるのでしょうが、私たちが美しさや感動の気持ちを覚醒させてくれる引導を示してくれることなのではないでしょうか。引き出しを開けるとそこにある作品。それら今回出会った作品は、私の美意識、ものごとの本質へのビスタを大きく引き上げてくれるものばかりでした。今回はこうした作品たちと、素晴らしい審査員の方と共にたくさん出会えたことが何よりも幸せでした。ありがとうございました。

 
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