常設展示・作家
サウンドプロデュース
1975早稲田大学商学部卒業
1977フランス モンペリエ大学留学(現代美術、建築美術専攻)
1979ニューアート西部(株)入社
1983同社 退社
1983サウンド・プロセス・デザイン(株) 設立
2018没
各地の美術館、博物館の音、照明デザイン、サウンドオブジェの製作、地下鉄、駅のサイン音の総合デザイン、マルチメディアの製作などや企業の音環境のデザイン、コンサルティング、リサーチを手がける。
下見のために訪れた座散乱木遺跡。説明の看板以外は、遺跡を埋め戻しているために、いわば、ただの空き地であった。しかし、座散乱木に立ち、風のざわめきや虫の声に耳を澄ますとき、自分の体が小さくなり、そのまま、この空間に飲み込まれてしまいそうな感覚におそわれた。やがて、身体は消滅し、聴覚と嗅覚を中心とする感覚のみが心地よく残った。私たち現代人の何倍も鋭い感覚を持っていたと思われる古代人は、この太古の座散乱木の地でなにを見、なにを聴いて、なにを感じていたのだろうか。感覚ミュージアムの音のデザインの原点は、この私自身の体験にある。それは、日常的な世界の隙間からかいま見ることのできる悠久の世界、あるいは、なにげない風景のなかに潜んでいる輝かんばかりの美しさ。私たちが普段忘れてしまい、無視してしまうさまざまな感覚のはたらきをもう一度取り戻したい。少なくとも、自身の感覚のはたらきには鋭敏でありたい。そのための「きっかけ」をつくれないものか。このミュージアムを訪れる人々が、この「きっかけ」を無意識のうちに持ち帰り、ある日、いつか、なんらかの機会に、この感覚を自由に解き放つ「きっかけ」が発動することを心から祈っている。